今回の総選挙で象徴的な勝利を収めた野党候補といえば、立憲民主党の吉田はるみ(東京8区)だろう。
対立候補の石原のぶてるはこれまで10回連続当選の無敗。その石原に比例復活も許さない大差をつけて8時「ゼロ打ち」の当確。最終的には石原の10万5000票に対して、14万票近い票を得た吉田の圧勝であった。
この選挙の「勝因」を以下に分析する。
- 得票状況の分析 -完璧な「963」の達成
- 勝因(1)-野党票固めの個別戦術
- 勝因(2)-無党派層にアプローチするストーリーの提示
- 勝因(3)-オーガナイズされた選対によるボランティア選挙体制
- 勝因(4)-効果的なSNS発信による空中線での「圧勝」
- 残念だった点(1) -候補者本人の発信クオリティー
- 残念だった点(2)-
- 小括 -「はるみ選挙」をどう「標準化」するか
1.得票状況の分析 -完璧な「963(クロミツ)」の達成
まずは以下の表をご覧いただきたい。
吉田がリベラル層(立憲、共産)の9割、無党派(支持政党「特になし」)の6割、そして保守層(自民)の3割から「963(クロミツ)」の割合で得票を重ねたことがみてとれる。
この他にも、『東京8区 NNN出口調査』では、以下の数字が明らかとなった。
男性得票 石原伸晃38% 吉田晴美45% 笠谷圭司17%
女性得票 石原伸晃30% 吉田晴美54% 笠谷圭司16%
無党派 石原伸晃21% 吉田晴美60% 笠谷圭司19%
10代 石原伸晃31% 吉田晴美50% 笠谷圭司19%
20代 石原伸晃43% 吉田晴美43% 笠谷圭司14%
30代 石原伸晃31% 吉田晴美49% 笠谷圭司19%
40代 石原伸晃33% 吉田晴美44% 笠谷圭司23%
50代 石原伸晃33% 吉田晴美48% 笠谷圭司19%
60代 石原伸晃32% 吉田晴美53% 笠谷圭司15%
70代以上 石原伸晃37% 吉田晴美56% 笠谷圭司7%
出典: https://www.ntv.co.jp/election2021/exitpoll/?target=tokyo08
2.勝因(1)-野党票固めの個別戦術
(1)路線別(勝手)応援部隊による地声街宣
・選挙自体を区内全域に周知する効果
・沿線ごとの「顔」的住民が前に出たことによる「代弁効果」
(2)のぼり旗100本作戦
・「市民と野党の統一候補」を誕生させたリベラル市民の熱気を表現
(3)以上を可能にした「市民合同選対」での市民運動/共産党/その他野党との接続
・共産党地区委員会に集結する姿
3.勝因(2)-無党派層にアプローチするストーリーの提示
(1)序盤 -#吉田はるみだと思ってた によるメディアジャック
(2)序盤 -一緒に前に立ってくれる顔出し可能な市民を早期からスカウトする
(3)中盤 -「誰の代弁者なのか」を明確にする本人のスピーチづくり
(4)中盤 -市民による応援スピーチ
(4)終盤 -#女性の声が政治を変える で「野党共闘候補」から進化
(5)終盤 -
4.勝因(3)-オーガナイズされた選対によるボランティア選挙体制
吉田はるみ選対は山本太郎騒動によって爆発的に向上した知名度、同情を「ボランティア」という形でのエネルギー結集に効果的に集約した。
(1)ボランティアの参加導線(呼び込み)の効果的な実施
SNSに集中したアクセスから、ボランティアへの呼び込みをシームレスに行っていた。具体的には、「ボランティア参加申し込みフォーム」をgoogleフォームで開設、そこへのリンクを各SNSメディアのトップに設置していた。
これにより、初めて「はるみさんはどんな人かな」レベルで注目した人であっても、「どんなふうに市民の力を集めているのか」が可視化され、気軽に参加しようと思ったときに誰でも参加できるようになっていた。
・フォームのリンク
・フォームを貼ったツイッターのリンク
(2)ボランティア参加申込者への適切な情報提供
・3面作戦(従来の後援会メルマガ、公式LINE配信、ボランティアメルマガ)
・事務所に来た人は来訪者カードからメルマガに毎日追加登録
・今日は何が起きていたのか、明日は何をすればいいか、が毎晩知らされる仕組み
(3)ボランティアへの適切なフォローと効果的な巻き込み(オーガナイズ)
・ボランティアオープンチャットでの相互交流、情報の自動拡散
・ボランティアミーティングによる顔合わせ効果
・突発的な呼びかけを意図的に実施する
└追っかけ車両同乗者募集
└証紙貼り追加
・電話かけの反応を逐次共有してさらなるボランティアを呼びかける態勢
5.勝因(4)-効果的なSNS発信による空中線での「圧勝」
(1)ツイッター本人アカウントのクオリティーコントロール
└本人スピーチのエモ抜粋とエモ写真のセット投稿
(2)ツイッター応援アカウントの圧倒的コンテンツ質/量
└街宣予定の告知
└街宣での演説内容書き起こし
└政策バナー/人柄バナーによる情報提供
└
(3)インスタグラムの効果的利用
└置物コンテンツとしての通常投稿
└投票日対策としての前夜400枚投稿
└以上によるフォロワー数の急上昇
(4)圧倒的な「写真の力
残念だった点
(1)ウェブ媒体のクオリティーコントロール不足
└ツイッター本人アカウント「中学生の自由研究みたい」な投稿事件
└インスタグラムの機動性の低さ
└ウェブサイトの内容混乱
(2)広報物全般の問題
└本人のこだわりによる進行スケジュールの停滞
└事務所側のディレクション能力不足
(3)事務所としての事務処理能力不足
└問い合わせ対応能力の低さ(電話回線、電話番の不足)